きっかけ

早いもので彫り始めて30回目の春が来ます。
今回は私がこの道に入るきっかけとなった事を少し書こうと思います。

小学校の修学旅行で訪れた日光東照宮を飾っていた龍の彫刻を見たことからです。
自分もあんな龍を彫ってみたい!と憧れ、高校卒業後周囲の反対を押し切り鎌倉で工房を開いていた師匠へ住み込みで弟子入りしました。
右も左もわからないうちからいきなり社寺建築彫刻を彫ることとなり無我夢中で仕事をこなしました。
彫り上がれば二百年、三百年と後世に残るものになることを知り、責任の重さに悩み、実家へ帰りたいという泣き言を言う暇もないまま月日が流れました。

一口に建築彫刻と言いましても様々な種類の彫り物があります。
4mを超える欄間彫刻から蟇股(かえるまた)・木鼻(きばな)・笈形(おいがた)・手挟(てばさみ)・虹梁(こうりょう)・懸魚(げぎょ)・兎の毛通し(うのけどうし)など、聞き慣れないものばかりでとまどいました。
しかも中に納まる仏さまの彫刻もほぼ同時進行で勉強していかなくてはならず、大変苦労しました。
師匠に従事して納めた仏さまは関東のみならず本州各地に至っております。
龍を彫りたいという単純な思いから飛び込んだこの世界で培った技術は、細かった右腕をたくましい職人の腕へと育ててくれました。

後日知ったことですが日光東照宮も師匠が修理していました。(昭和の大修理)

おまけ
久しぶりに蟇股を彫刻しました。椿に鳥がとまっている図です。

下絵

木取り

荒彫り

彩色中

完成